雲上の露天風呂を堪能する初冬の本沢温泉テント泊旅/2021年10月22-23日

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【今回訪れた場所】

本沢温泉

本沢温泉は長野県南佐久郡南牧村にある温泉であり、山小屋になります。八ヶ岳連峰の硫黄岳に向かう山中にあり、アクセス手段は山登りのみという秘境めいた場所です。風情あふれる内湯もさることながら、ここの名物はやはり日本最高所の露天風呂である「雲上の湯」でしょう。標高2,150mにある露天風呂は季節を問わず楽しむことができます。今回はこの「雲上の湯」を満喫すべく、旅に出かけます。

稲子湯旅館

稲子湯旅館は長野県南佐久郡小海町にある旅館です。映画『岳』のロケが行われた場所だそうです。露天風呂はなく、内湯のみですが、日帰り利用も可能です。本沢温泉、その先の天狗岳・硫黄岳へのアクセス拠点として利用される方も多いのではないでしょうか。

【プロローグ】

以前までは山頂に行くことを目的に山に向かい、山に登ることが多かったのですが、ここ最近はピークハントするだけが山楽しみ方ではないと思えるようになってきました。そのきっかけとなったのは、昨年の雲ノ平・高天原のテント旅でした。歩くこと、登ることそのものが楽しい。山頂以外にも美しかったり、綺麗だったり、忘れられない場所というのはいくらでもある。だからプロセス自体を楽しもう。そう思えるようになりました。特に山登りをして、山の中にある温泉を愉しむことにハマりました。

そこで今回は以前から気になっていた本沢温泉にいくことにしました。この時期であればまだ雪も気にせずいけるだろうし、行程的にもちょうど良いだろうという思惑がありました。大学時代の友人Hとの男二人旅です。平日に行けば貸切で楽しめるだろうという魂胆で有給をとっての山旅です。

【スケジュール】

10月22日(金)

11:12 小海駅着

11:25 バス乗車

12:15 みどり池入り口BS着

12:20 行動開始

13:45 みどり池着(しらびそ小屋)

15:00 本沢温泉着

18:00 就寝

10月23日(土)

06:00 起床

07:00−09:00 外湯タイム

10:30 下山開始

13:00 稲子湯旅館到着

【山行記録】

友人Hと東京駅で待ち合わせ、まずは新幹線で佐久平駅に向かいます。お金を気にせずに新幹線を利用できるようになることは大人の証と言えるのではないでしょうか。私はまだまだ子供です。快適な新幹線の移動はあっという間に終わってしまい、1時間20分ほどで佐久平駅に到着します。ここからJR小海線に乗り換え、小海駅を目指します。所要時間は1時間弱です。

小海駅から小海町営路線バスに乗り、みどり池入り口BSに向かいます。約50分バスに揺られます。料金は800円です。平日ということもあり、バスは空いていて、私たち以外には2名の方だけが乗っていました。なお稲子湯・みどり池については冬季は運行していないのでご注意くださいませ。

途中で運転手の方がバスを止めてくださり、「鹿の群れがいるよ!」と親切にも教えてくださりました。かなり長い間目が合いました。

そんな道中を楽しんでいたらみどり池入り口BSに到着しました。10月とはいえやはり寒いです。そして、小雨が降ってます。oh…。身支度をして行動開始です。穏やかな道が続きます。途中で携帯を無くすというアクシデントに見舞われ、無駄な時間を過ごしてしまいましたが、約1時間30分でみどり池(しらびそ小屋)に到着しました。

雨がシトシトと降り続け、体が冷えます。ハードシェルを忘れるという痛恨のミスを犯してしまい、若干の撥水機能しかないソフトシェルのみだったので、多少の雨とはいえ内部に徐々に入ってきます。頼むから止んでくれよ・・・と思いながら黙々と歩き続け、15時に本沢温泉に到着しました。登山口から約2時間30分だったのでコースタイムの80%くらいの所要時間でしょうか。

雨が強くならなる前に幕営を済ませるべく、急いで準備を進めます。

今回はテントじゃなくでツェルト使ってみるかと思い持ってきたのですが、到底無理でした。雨が降っていなければなんとか過ごせたのかもしれませんが、寒すぎてとてもではないですが夜を耐えることはできなさそうです。とりあえず温泉だけ入ることにして、本沢温泉の内湯に入浴します。天気も悪いので露天風呂は明日朝に入ることにしました。キャンプ場から山小屋までは徒歩10分くらいです。

内湯と外湯は泉質が違うそうで、内湯の方はナトリウム・カルシウム‐硫酸塩・炭酸水素塩泉温泉になります。こけももの湯という名称です。木造りの雰囲気のある作りになっていて、浴槽の蓋もどっしりとしたしっかりした作りで動かすのも一苦労です。成人男性4人は余裕で入れる大きさです。浴槽の底には温泉成分の凝固したものがたくさん積もっていて、ザラザラとした感触です。いくらでも入っていられる安らぎの空間でした。心から外に出たくない、ここで一晩明かしたいと思ったのですが、もちろんそんなことは無理なので、決意を新たに外に出ます。

雨は雪に変わってました。村上春樹の主人公さながらに、「やれやれ」と呟いてしまいました。

このあと一先ずツェルトの中で過ごしてみたのですが、浸水が激しく、このまま寝ることは絶対にできないなと判断し、友人のテントに避難させてもらうことにしました。友人のテントは一人用だったのですが、逆さで寝ることでなんとか場所を確保することができ、一晩明かすことができました。友人には頭が上がりません。準備不足、判断ミスを反省しました。

さて、翌日は6時頃に起床し、露天風呂一番乗りを目指します。天気は快晴!露天風呂までは山小屋から約15分ほどの道のりです。

先に温泉説明の看板が見えてきます。

一気に開けます。ここまでくればあと少しです。

見えてきました!

あと少し!

到着!嬉しい!

板を一枚一枚外して入浴の準備を進めます。この板も結構重い。誰かが来る前にさっさと入りたい!そして寒いからさっさと入りたいという思いに押され、着替えも捗ります。開放感あふれるこの場所で、裸になった瞬間、動物としての本能が一瞬だけ解放されたかのような気持ちになりました。

そして入浴!前日の寒さもあったので、お湯の暖かさに一気に身体が癒されます。安心感がすごい。お湯の温度は多分42度くらいなのでいくらでも入れてしまう。というより寒すぎて外に出たくない。結果的に他のパーティーの方も含めて計4名で入ることになったのですが、余裕持って入れる浴槽の大きさでした。写真で見るよりも意外と大きいなと思いました。

photo by Hiro

ご一緒させていただいた方との話も盛り上がり約1時間ほど入浴してしまいました。いつまでも浸かっているわけにもいかないので、出発することにします。あー寒い。冷たい。家にこの温泉ごと持って帰りたい。叶わぬ夢です。もっと厳冬期にもきてみたいです。

本当は上まで行こうと思っていたのですが、もう十分温泉を満喫できたし、下山後の稲子湯を時間かけて楽しむのもいいのではないかという話になり、下山することにしました。キャンプ場に戻り、片付けをし下山開始です。

この日は天気が良かったで、途中のみどり池の景色が素晴らしかったです。

photo by Hiro

トラブルもなく、スイスイと下山することができ、13時に稲子湯旅館に到着です。バスまでの時間を利用し、せっかくなので稲子湯にも入浴します。他にお客さんが誰もおらず、貸切状態だったので、中の様子も撮影させていただきました。この温泉もとても素晴らしかったです。温度調整の冷水は源泉をそのまま利用したもののようですが、酸味のある水でとても滑らかな感じがしました。この水にこの温泉の醍醐味があるような気がします。この水だけを使った水風呂に入りたい。サウナ後に入ったら相当に気持ちよさそうです。

今回の旅は以上になります。本沢温泉の内湯・外湯、そして稲子湯の三つの温泉を入浴することができ、とても贅沢な旅になりました。装備の面での反省を活かし、今度はより厳冬期に訪れたいと思います。

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【参考資料】

小海町営路線バス 時刻表・運賃表

ヤマケイアルペンガイド 八ヶ岳