2021/7/22-24 北アルプス表銀座テント泊縦走(1日目:中房温泉ー大天荘)

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【プロローグ】

今回は北アルプス表銀座をテント泊で縦走してきました。テントでの二泊三日です。北アルプスの英峰である槍ヶ岳を目指す各ルートを〇〇銀座と呼ぶならわしがあり、他にも裏銀座や西銀座というものもあります。表銀座はその中でももっとも一般的で人気のコースとされています。

槍ヶ岳は誰が見てもそれとわかるわかりやすいフォルムをしており、一方で他者を寄せ付けない崇高さ・荘厳さを兼ね備えている日本屈指の名峰です。そんな槍ヶ岳を眺めながら美しい北アルプスの山並みを楽しむことができるのが表銀座縦走の魅力になります。

私は2016年に裏銀座の一部、2020年に西銀座の一部を経験しているので、最後に残されたのが表銀座ということになりました。なかなかに変則的な順番だと思います。2016年に大天井岳まではいったことがあるのですが、その先はまだいったことがありませんでした。また今回は上高地に下山していくいうコースを取ったので、私にとっては初めて上高地を訪れるという機会にもなりました。二泊三日ということで少し長文になりますが、写真だけでも最後まで眺めていただけると嬉しいです。

【山行計画】

1日目:中房温泉ー燕山荘ー大天荘ー大天井岳登頂(テント泊)

2日目:大天荘ーヒュッテ西岳ーヒュッテ大槍ー槍ヶ岳山荘ー槍ヶ岳登頂(テント泊)

3日目:槍ヶ岳山荘ー槍沢ルートで下山ー上高地ビジターセンター

【メンバー】

S:本人、登山歴6年目。荷物は18キロほど。ザックはカリマー。

U:30代男性、登山経験豊富。荷物はカメラ合わせて20キロほど

Y:30代男性、登山を初めて半年。初めての北アルプステント泊。荷物はカメラ合わせて16キロほど。彼が撮ってくれた写真も一部利用

O:30代男性、登山歴は2年くらい。彼は一日早く入山し、山小屋泊で踏破を目指します。

【登山日誌ー1日目】

旅の始まりは得てしていつも騒々しい。ギリギリまで仕事をしてしまい、万全だと思っていたはずの準備を振り返るとボロが見つかり、余裕を持って行動していたはずなのに慌ただしく過ごしてしまいます。4連休のうち3日間も家を空けることに後ろめたさを覚えつつ、家を出ます。

今回は毎日あるぺん号を利用するため集合場所は竹橋にある毎日新聞社の玄関ロビーになります。バスが出るのは23時なのですが余裕を持って22時30分に集合するとすでに多くの登山客でロビーは満員。金曜日の夜に広がる異様な光景、そして独特の高揚感と緊張感を肌で感じ、あーいよいよなんだなあと実感をします。

バスはほぼ定刻通りに出発しました。途中談合坂と諏訪湖で休憩を挟みます。寝れなくはないが熟睡はできないという状態が続き、気づいたら朝が訪れていて、バスの外には安曇野の美しい山岳風景が広がっていました。Uはよく寝れたらしく、私とYは寝不足の身体に鞭打って行動することとなりました。

5時40分に中房温泉に到着。準備を進めて6時手前に行動開始。いよいよ今回の旅がはじまります。

中房温泉から燕山荘への道のりは合戦尾根ルートと言われており、北アルプス三大急登の一つといわれています。とはいえ危険な箇所はなく、さほど傾斜が急なわけではないので初心者の方でも十分に挑戦することが可能です。中房温泉の標高1,462mが、燕山荘の標高が2,763mということで標高差1,301mを上がっていくことになります。途中には休憩場が間隔をおいて設けられているので、休みをとりながら登っていくことができる優しい設計になっています。

そしてこのルートの最大の魅力といえば標高2,300mにある合戦小屋で食べることができるスイカです。夏の日照りの中で暑くなった身体をすいかの瑞々しさが一気に癒してくれます。私たちは合戦小屋に8時30分に到着し、すいかを一気に食べ切り引き続き燕山荘を目指します。

行動開始から約4時間、10時5分にようやく燕山荘に到着です。やはりここは美しい。ここまでであれば日帰りで訪れることも可能なので本当におすすめの場所です。燕山荘は1921年に開業した歴史ある山小屋で今年100周年を迎えました。収容人数600人と日本を代表する山小屋の一つです。2016年に一度泊まったことがありますが山小屋とは思えない快適さで感動したことを5年たった今でも覚えています。今回はじっくり休憩を取り11時に行動を開始します。売店で売っているりんごシャーベットは本当におすすめ。パックされたものなので脇や首を冷やして熱中症対策をしながら、溶けてきたら食べることができるというまさに一石二鳥の素晴らしい商品です。

大天荘に向かって歩き始めて15分ほどでYに異変が生じ、再び歩みを止めます。体調が悪く意識が朦朧とするとのことでした。確かに見るからに顔色も悪く、本当に辛そうでした。おそらく熱中症と高山病の双方の症状だったと思います。中房温泉に引き返す選択肢も残しつつ、UにYの荷物の一部を持ってもらい先に行ってもらうことにしました。私はYと一緒に残り、体調の回復を待って今後について判断をすることにしました。

そりゃそうだよな、と休むYの横で私は一人考えていました。これだけの標高に登るのも初めてで、夏の登山も初めてで、この重さを背負って行動するのも初めてとなれば、体調を崩してしまう可能性も高いだろうし、計画を立てた私の責任だなと反省をしました。仮に体調が戻らなければ中房温泉に戻ろう、そして仮に体調が戻ったとしても槍ヶ岳の登頂は諦めてエスケープルートから下山しようとこの時決めました。

結果的に1時間ほど休憩を取りなんとか多少回復してきたということだったので、ゆっくりと歩き始めることにしました。幸いにも雲が出てきてくれて日光の容赦ない攻撃を受けずに済んだのが後々振り返ると大きかったなと思います。

大下りノ頭に13時ちょっと前に到着。ここから再び登り返します。それにしてもここの稜線と広がる景色は本当に美しい。いくらでも見ていられる。

喜作レリーフを14時45分に通過し、山荘までの最後の登りを少しずつ登り詰め、15時45分に大天荘に到着しました。最後の登りがなかなかに辛かった。ちなみに喜作というのは、大天井岳から槍ヶ岳に直接至る東鎌尾根に新道を開設した小林喜作という方のことで、その方の功績を讃えるためにレリーフは作られたそうです。

覚悟はしていたものの、テント場は大賑わいです。良い場所は当然すでに確保されており、聞くところによると昼前には埋まり始ていたそうです。残されるのは岩場のような過ごしにくいところや、風の吹きさらしに合うような場所になるのですが、こればかりは仕方がない。寝場所を確保できるだけでもありがたいと思うようにしています。

テントの設営を終え、食事の準備を始めるとともに雲が晴れてきました。ここからは写真中心にお届けいたします。

徐々に日が暮れてくる。

ちなみにこの日の食事はサタケのマジックパスタ。フリーズドライなのでお湯を沸かして入れて待つだけ。山の上でパスタを食べることができるなんてなんて贅沢なんだろうか。お湯の分量の調整が美味しく食べれるかどうかの要になると思いました。

この日は結構疲れが溜まっており、決して万全の状態ではなかったので大天井岳への山頂は諦めて早めに就寝します。翌日は朝2時に起床し、3時行動開始です。

二日目の記事はこちらへ。

2021/7/22-24 北アルプス表銀座テント泊縦走(2日目:大天荘ー横尾山荘)